2012年10月12日金曜日

海外各国に見る、遺伝子組み換え作物栽培の動向 第5回:インド (上)

Btワタが導入された2002年以前のインドでは、高い作物栽培コスト(特に高価な殺虫剤 の購入コスト)と作物生産性の低さから、灌漑設備が整っていない地域を中心に多くの 生産者がワタの栽培意欲を失い、ワタ栽培を縮小したり、離農する状況が続いていまし た。それが2002年のBtワタ導入以降、生産者は次第にワタ栽培へ回帰し、2002‐2011の 10年間にインドのワタ栽培は急回復、急成長を成し遂げました。今回と次回では、Btワ タの導入以降インドのワタ栽培がどの様に変化したのか(今回)、Btワタの導入が生産 者や農村経済に、どの様なメリットをもたらしたのか(次回)を紹介します。

  • インドのワタ栽培総面積の推移とBtワタの普及
    • インド国内のワタ総栽培面積は、2002年の約760万ヘクタールから2011年には約1,210万 ヘクタールへと倍増しました。その中でもBtワタの栽培面積は2002年の5万ヘクタール から2011年には1,060万ヘクタールへと急拡大し、2011年時点でインド国内のワタ栽培の 88%がBtワタとなっています。またBtワタを利用する生産者数も、2002年の5万人から201 1年には約700万人へと急増しました。
  • Btワタ導入後の、ワタ総生産量の変化
    • インド国内のワタ総生産量は、2001年の1,580万ベール(1ベール=約170kg)から、201 1年には3,120万ベールへと倍増しています。なお2012年には3,550万ベールと過去最高 を更新する見込みです。 
  • Btワタ導入後の、ワタ単収の変化
    • インド国内のワタ単収は2001年の308 kg/ヘクタールから2007-08年の567 kg/ヘクター ルまで増加しました。2008年以降は、ワタ栽培限界地域(降雨量が少ない等、収量の低 い地域)での栽培が増加したにも関らず、全体として約500 kg/ヘクタールの収量を維 持しています。2012年の収量平均は499kg /ヘクタールと見通されています。
  • Btワタ導入後のインドのワタ輸出量の変化
    • インドは、Btワタの導入によって生産量を飛躍的に増加させたことから、この10年間で ワタの純輸入国から純輸出国へと転じました。インドのワタ輸出量は2001年の5万ベー ルに対し、2011年には約550万ベールと100倍以上に増加しています。
 Btワタはこの10年の間に国内へと普及し、インドのワタ生産や輸出を一変させました。 Btワタが普及したのには、何より生産者にメリットがあり、彼らの支持を得られたから に他なりません。次回はBtワタが生産者や農村経済にもたらしたメリットを紹介し、Bt ワタが普及した理由をご説明します。

(参考文献) ISAAA Briefs, pp.51-87 (2012)