2012年9月7日金曜日

海外各国に見る、遺伝子組み換え作物栽培の動向 第四回:アルゼンチン (下)

前回に引き続き、アルゼンチンにおける遺伝子組み換え作物栽培の現状をお伝えします。今回は遺伝子組み換え作物の導入以来15年間(1996-2011年)でアルゼンチンが得た経済的ベネフィットについてご紹介します。

◇遺伝子組み換え作物の導入による経済的ベネフィット

遺伝子組み換え作物の導入以来15年間にアルゼンチンが得た経済的利益は723億USドル(1ドル=80円換算で5兆7,840億円)に達します(1)。その内訳は以下の通りです。
  • 遺伝子組み換え大豆(除草剤耐性):導入によってもたらされた経済的利益は、全体で651億USドル(5兆2,080億円)です。そのうち72.3%は農業生産者に、21.3%は課税として政府に、6.5%は農業技術(種子・除草剤)の提供者に還元されています。
  • 遺伝子組み換えトウモロコシ(害虫抵抗性・除草剤耐性の掛け合わせ品種):導入によってもたらされた経済的利益は、全体で53億USドル(4,240億円)です。そのうち68.2%は農業生産者に、11.4%は課税として政府に、20.4%は農業技術(主に種子)の提供者に還元されています。
  • 遺伝子組み換えワタ(害虫抵抗性・除草剤耐性の掛け合わせ品種):導入によってもたらされた経済的利益は、全体で18億USドル(1,440億円)です。そのうち96%は農業生産者に、4%は農業技術(種子・除草剤)の提供者に還元されています。
  • 上記の通り、アルゼンチンでは遺伝子組み換え作物導入から15年間で723億USドルの経済的利益が達成されました。その経済的利益の72.6%という大きな割合が農業生産者へ還元され、農業生産者の収益改善に大きく寄与している事が分かります。なお、国や技術提供者にも経済的利益が分配されていますが、技術提供者の経済的利益は小さいものでした。 

◇今後の遺伝子組み換え作物の栽培について

今後アルゼンチンでは、遺伝子組み換え大豆の掛け合わせ品種(害虫抵抗性+除草剤耐性)や、乾燥耐性小麦の利用を目指しています。それぞれの潜在的な利益をシミュレーションした結果、来季からこれらを利用できると仮定した場合で、次の十年の間に大豆は91億~260億USドル(7,280億~2兆800億円)の経済的利益、小麦は5.2億~19億USドル(416億~1,520億円)の経済的利益になることが試算されています(1)。


(1) ISAAA Briefs, pp.45-51 (2012)
(2) Trigo EJ. Fifteen Years of Genetically Modified Crops in Argentine Agriculture (2011)


 (次回は、インドにおける遺伝子組み換え作物栽培の動向について報告いたします。)