英国PGエコノミクス社(PG Economics)の年次報告書では、17年目となるGM作物の商業利用により、農業生産性と所得が顕著に改善し、同時に環境影響の少ない農業生産が達成されたことが報告されています。今回の報告書では、具体的に下記のベネフィットが報告されています。
- 不耕起・減耕起栽培により、耕起のための農業機械の 燃料利用が削減され、また土壌中にCO2がトラップされたため、農業生産活動に由来する温室効果ガス排出が1996〜2012年の累計で二酸化炭素換算で270万トン削減されました。270万トンとは、1,190万台の自動車が1年間に排出する二酸化炭素に相当します。
- 農薬の使用量が1996〜2012年の累計で50万3,000トン(重量比率で8.8%)削減されました。
- 害虫抵抗性の利用によって、1996-2012年の間でトウモロコシの単収が10.4%、ワタの単収が16.1%増加しました。
- 除草剤耐性作物の利用により、ダイズ、ナタネにおいて、幾つかの国で雑草防除効果が改善し、単収の増加が見られ、作物生産量の向上が図られました。アルゼンチンでは、(訳者註:除草剤耐性の利用で容易になった)不耕起栽培の採用により、小麦、ダイズの二毛作が新たに可能になるなど、農業生産に貢献しています。
- GM作物の利用による作物生産量の増加は、1996-2012年の累計で、ダイズが1億2,200万トン、トウモロコシが2億3,100万トン、ワタ1,820万トン、ナタネ660万トンに達しました。
- GM作物により単収が向上したため、農地が1,510万ヘクタール(訳注:耕作放棄地を含む日本の全農地面積454万ha の3.3倍に相当する面積)増えたのと同等の、生産量増加が達成されました。(ダイズ490万ヘクタール、トウモロコシ690万ヘクタール、ワタ310万ヘクタール、ナタネ20万ヘクタールに相当)。1,510万ヘクタールとは、米国全農地の9%、ブラジル全農地の24%、EU諸国の穀物栽培面積の27%に相当します。
- GM作物を利用する世界1,730万人農業生産者の所得が、2012年単年で188億ドル(約1兆8,800億円、平均して1ヘクタール当たり117ドル(11,700円))増加しました。また、1996-2012年の累計の増加は1,166億ドル(11兆6,600億円)です。
- GM作物の高い収量のベネフィットを最も享受しているのは、開発途上国の農業生産者であり、その多くは資源に恵まれない小規模農業生産者です。
- 農業生産者所得の増加1,166億ドル(11兆6,600億円)は、先進国、開発途上国それぞれにおいて、半々ずつ達成されています。
- GM作物を利用するために農業生産者が追加で支払っている費用は合計56億ドル(5,600億円)と、GM作物を利用することで農業生産者が得ている利益244億ドル(2兆4,400億円)の23%です。このため、農業生産者としては、GM作物の利用のために1ドルと投資すると3.33ドル(333円)の利益があり、GM作物の利用は魅力的な投資となっています。
- GM作物を利用することで農業生産者が得ている利益は、開発途上国では1ドルの投資に対し3.74ドル(374円)、先進国では3.04ドル(304円)となっています。この差は、先進国と比べた開発途上国におけるGM作物による平均的な利点の大きさに加え、知的財産権の規定や実施の弱さを反映しています。
2014年5月6日/PG economics 社プレスリリース(英文)