2011年11月15日火曜日

<特別コラム> TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加交渉と、遺伝子組み換え(GM)作物

このところ、TPPの参加とGM作物、GM食品を関係付けた報道が多く見られます。この中で情報不足や誤解に基づく報道が多く見られる事から、今回このセクションではTPPとGM食品に関連するポイントを整理してご紹介します。


ポイント
  1. GM作物の食品安全性は法律に基づき科学的に安全性が評価され、安全性が認められた作物のみが流通しています。
  2. 各国政府が食の安全を確保するための権利は、WTO(世界貿易機関)でも認められています。このためTPP交渉へ参加することが、日本独自の食品安全性基準の緩和へ直接的に繋がるわけではありません。
  3. 日本のGM食品表示は、農作物の産地表示などと同じように消費者の「知る権利」の担保を目的としたもので、食品安全性を示したものではありません。ですから、食品の安全性と表示のルールは異なる議論です。

第7回:窒素肥料を有効に利用できる作物の開発

このコーナーでは、モンサント・カンパニーが注力する “持続可能な農業(Sustainable Agriculture)”への取り組みを、弊社の年次報告書 (United in Growth:2010年11月2日発行)よりご紹介しています。今号では、(United in Growth P.19)
http://www.monsanto.com/SiteCollectionDocuments/2010-csr-report.pdf

農作物を育てるには水や土だけでなく、肥料や農薬など様々な農業生産資材(資源)が必要です。モンサント・カンパニーでは、第2回でご紹介した乾燥耐性作物以外にも、農業生産に必要な資源量を抑えつつ、収量を増加させるための研究開発を進めています。そのひとつが窒素有効利用作物です。
モンサント・カンパニーでは、遺伝子組み換え技術を用いることによって「通常の窒素条件下での作物収量を改善し、低窒素状況下で収量の安定化を図ることができる」、「作物の窒素肥料の利用効率を向上させることによって、作物に吸収されず土壌に残り、河川へ流入し環境を汚染する窒素成分を削減できる」作物の開発を進めています。
窒素を含む肥料原料(窒素・リン酸・カリなど)は、世界的な人口増加や中国・インドにおける穀物需要増加から、需給動向が年々厳しく、価格も上昇してきています(下記リンク先参照)。
モンサント・カンパニーは、遺伝子組み換え技術を用いた品種改良により、肥料使用量を削減しても収量を維持させることで、「持続可能な農業(Sustainable Agriculture)」の実現に貢献できると考えています。

<参考>
農業共同組合新聞 春肥の価格4.3%値上げ - JA全農
http://www.jacom.or.jp/news/2011/10/news111031-15286.php
肥料をめぐる情勢について(農林水産省作成資料:平成21年3月)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/nenyu_koutou/n_kento/pdf/siryo2.pdf

スペイン:GM作物の利用割合が、過去最高に達する

【記事要約】
2011年9月時点で、スペインにおける害虫抵抗性(Bt)トウモロコシの栽培面積は97,326ヘクタール、同国内のトウモコシ栽培面積割合にして26.5%と、過去最高の水準に達しました。
内訳を見ると、アラゴン州が41,368ヘクタール、カタロニア州とエクストレマドゥール州がそれぞれ29,632ヘクタール、10,567ヘクタールでした。これまで同様、2011年もスペインの農業生産者は、GMトウモロコシを用いることで生産量を増加させ、農業生産に必要な資源投入量を減少させながら収量を上げる事が可能となりました。

2011年9月23日/ ISAAA
ADOPTION OF GM CROPS IN SPAIN REACHES RECORD HIGH
http://www.isaaa.org/kc/cropbiotechupdate/article/default.asp?id=8501

ポルトガル:2011年GMトウモロコシの栽培面積は、60%増加

【記事要約】
ポルトガル農業・地域開発省が発表した公式データによると、ポルトガル国内の害虫抵抗性(Bt)トウモロコシの栽培面積は、2011には7,843ヘクタールと、2010年の4,868ヘクタールに比較して60%増加しました。この増加は、ポルトガルの農業生産者がGM作物の利用が、持続的な農業生産や、ポルトガル農業の国際競争力の確保において重要と確信したことを示しています。ポルトガルの農業生産者は、1998年にEU域内で栽培が認められて以来、GM作物の利用によって利益を得ています。

2011年11月21日/ ISAAA
GM CROP ADOPTION IN PORTUGAL INCREASES BY 60% IN 2011
http://www.isaaa.org/kc/cropbiotechupdate/article/default.asp?ID=8658

英国:飢餓が、イギリスのGM小麦の認可に関する議論の呼び水に

【記事要約】
アメリカ合衆国小麦連合会の政策担当部長であるShannon Schlecht氏は「飢餓がGM小麦に関する議論の呼び水となった」と述べています。 Schlecht氏は、ロンドンで開かれた会議の席上、先月イギリス国内でGM小麦の圃場試験が認可された事はヨーロッパでGM小麦実用化にむけた「大きな前進」としています。
国際的非営利活動法人であるOxfam International によると、2010年以降高騰している食料価格は1,000万の人々を困窮させ、世界の飢餓人口は再び10億人に達する可能性があります。また国連食糧農業機関(FAO)と国際連合(UN)によると、2050年までに世界人口が90億人へと増加する中、現在より70%の食料増産が成し遂げられなければなりません。
Schlecht氏は、「バイオテクノロジーや遺伝子組み換え作物に関する議論は、よりオープンになりつつある」とし、「私達は世界の食料需要を満たす事ができる技術へ目を向ける必要があり、バイオテクノロジーはこれを達成するための一つの要素」と述べています。
国際連合によると、この10年間で小麦価格は80%上昇、トウモロコシ価格は74%上昇し、食品価格は2倍以上になりました。
アフリカの数カ国の農業生産者は既にGM作物の利用を始めている他、食用穀物の生産を改善できるGM作物に興味を持っている国もあります。
1996年、GM作物の栽培は6カ国でが開始しましたが、2010年時点で、GM作物を商業栽培している国は29カ国にまで増加しています。

2011年10月6日/ Bloomberg
Hunger Opens Discussions on Biotech Wheat as U.K. Approves Trial
http://www.bloomberg.com/news/2011-10-06/hunger-opens-discussions-on-biotech-wheat-as-u-k-approves-trial.html

6. 世界での作付面積

弊社ホームページでは、知っているようで実はよく理解していない、「だけど、今さら人に聞くのも・・・」といった遺伝子組み換えの基礎知識をご案内しています。このコーナーでは、下記リンク先(弊社ホームページ内「資料室」)から、毎回トピックを紹介していきます。
○遺伝子組み換え作物基礎知識○
http://www.monsanto.co.jp/data/knowledge/index.html

遺伝子組み換え作物の栽培面積は、大規模商業栽培が開始された1996年から毎年増加し、2010年には1億4,800万ヘクタールに伸びています。2010年の遺伝子組み換え作物の栽培総面積の48%は発展途上国におけるもので、栽培面積の増加率は発展途上国が先進国よりも高く、2015年までには発展途上国における栽培面積が、先進国の栽培面積を超えると推測されています。2011年2月に発表された国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の報告によると、1996~2010年の15年間の栽培面積累計は10億ヘクタールに達しました。(さらに詳しくは下記のサイトをご覧ください)
http://www.monsanto.co.jp/data/plantarea.html

<イベントのお知らせ>「高校生のディベートによる遺伝子組換え農作物に関する議論」のご案内

独立行政法人科学技術振興機構(JST) が主催する「サイエンスアゴラ2011」において、全国から参加した高校生により、遺伝子組換え農作物の利用の得失について、ディベートが行われる予定です。一般からの参加、聴衆も可能ですので、興味のある方は是非、お誘いあわせの上、ご参加下さい。以下、「サイエンスアゴラ2011」のHPからの転載です。

「高校生のディベートによる遺伝子組換え農作物に関する議論」
主催:食のコミュニケーション円卓会議
共催等:[協力]筑波大学、(独)農業生物資源研究所
日時 :11/20(日)10:30-12:00
会場 :日本科学未来館 7階 会議室3
内容 :
遺伝子組換え農作物の利用の得失について高校生がディベートを行います。そのディベートの終了後、会場からの意見や疑問に高校生を含む参加者が意見交換をして共に考えることで、ディベートに参加した高校生のみならず、会場に来られた方々と遺伝子組換え農作物の利用に関する科学的なコミュニケーションを進めます。
http://www.scienceagora.org/scienceagora/agora2011/program/Mb-58.html